
基礎知識の確認です。画像は例によってNano Banana先生です。
はじめに
電気メガネをなんとなく使っていると気にも留めなかったけど、ちょっと知識を得てから使うと「なるほどねえ」って納得できて面白かったので共有していこうという趣旨です。
そもそもDutyとは
英語のdutyは日本語にすると「義務」とか「職務・仕事」という意味だそうです。「on duty」で勤務中。
on dutyの反対はoff duty。仕事のオンとオフ。仕事してるオンの時間の割合が電気メガネで使われているOLEDパネルにおける「発光Duty」です。
次の表はソニーの製品情報からの引用です

XREAL One Proで採用されている0.55型 ECX348Eの最大輝度(発光Duty)は5000cd/m2 (90%)です。これはONの時間が90%という意味です。つまり10%は休んでこの明るさ。
パネルがリフレッシュレート90Hzで駆動している場合、Duty 90%だと10.0ミリ秒発光して1.11ミリ秒消えてるというのを1秒間に90回繰り返しています。
小話:カンデラ毎平方メートルとニト
明るさの単位cd/m2(カンデラ毎平方メートル)とNits(ニト)は同じです。
5000cd/m2 = 5000Nits
国際単位系と慣用表現の違い。ヘクトパスカルとミリバールみたいなもん。ソニーはサイズも尺貫法で使えない「インチ」じゃなくて「型」って書くぐらいちゃんとしてるのでカンデラ毎平方メートルを使ってますが、ここでは長いのでニトって書きます。
マイクロOLEDの明るさとDutyの関係

明るさのコントロールは基本的に電流で行います。電流が少ないと暗くて、多いと明るい。単純に明るくすると消費電力が増える。
それとは別にDutyを変えることで点灯時間を変えて明るさの調節をすることも可能です。消灯時間を長くすることで脳が感じる明るさを下げられるようになります。
ものすごく暗くしようとした場合、単純に電流を減らすとOLEDは発光にムラが出やすくなります。2025年8月にXREAL Oneのアップデートで2段階暗い設定が追加されたのですが、おそらくこれは単純に電流を下げたのではなくDutyも下げて対応したはずです。縦持ちしたスマホのカメラ(可能ならシャッタースピードを固定)越しに見ながら輝度を変えると斜めの線の出方が変わるのはDutyの割合が変わっているからです。斜めの線になるのはOLEDが上から下に書き換わるのと縦持ちスマホのカメラが左から右へ読み取られるからです。ちなみにメガネのツルに当たってしまうので物理的に難しいですが横持ちすると横に線が出ます。
なぜECX348Eの最大輝度はDuty 90%なのか、100%にすればもっと明るくなるのでは??と思うかもしれませんが、これはOLEDが焼き付くのと消灯時間中にデータの書き換えを行う必要があるという理由でダメらしい。
OLEDに電流突っ込みすぎると発熱で焼け付きます。明るさと焼き付きはトレードオフなので驚くような明るさを売りにしてる製品の寿命は短くなるはずです。もっとも1年で買い替える前提の商品なら分かりやすく過剰に明るくするのもマーケティング上はありだと思います。
電気メガネの明るさとは
いわゆるARグラスで使用されるバードバス光学系の場合、原理的に初期偏光時に半分、ハーフミラーでさらに半分近く、その他なんやかんやで8割以上の光は捨てられるのでパネルから眼球まで届くのは2割未満になります。たぶん15%も届けば上等ぐらいのイメージです。
ちなみにXREAL One Proで採用されているX Prismでもほとんど変わりません。
パネルのピーク輝度が5,000ニトでも製品のカタログスペックが600ニトになるのはそういう事情があります。12%はいくらなんでも??って思うんですが実はそこにDutyが絡んできます。
3DoFで残像を減らすのもDuty
液晶もそうですが、Duty 100%のOLEDは原理的に残像があります。いわゆるホールドボケ。このボケを解消するために液晶テレビが出てしばらくした頃に「黒挿入」が流行ったことがありますね。当時の液晶テレビはバックライトが蛍光灯みたいなもんで短時間で明滅させることができなかったので黒いフレームを挿入することで残像感を減らしてました。
OLEDは自身が発光するのでバックライトはありません。コマとコマと間に休み(=OLEDの場合は消灯=黒)を入れる、つまりDutyを下げることで残像感を減らすことができるようになりました。
この「Dutyを下げると残像感が減る」というのが3DoFや6DoFのような頭の動きに映像が連動する電気メガネでは重要な役割を果たします。人間は三半規管からの情報とブレた視覚の情報が噛み合わないとVR酔いが発生します。常にDutyを調節しないデバイスで3DoF、6DoFをすると個人差はありますが猛烈に酔いやすいです。
先日XREAL OneシリーズのIMUセンサーデータを利用したデモサイトを作成しているときに追従モード(ブレ補正なし)の0DoFモードにして自作空間固定ディスプレイのテストをしてたんですが、Dutyが高い状態なので残像で即酔いました。Dutyの設計はとても大切だと実感しました。
じゃあDutyずっと下げとけば良いじゃん?とはならない。代償として休み時間が多くなるのでDuty高めな状態に比べると明るさを保てなくなります。
パネルがフルパワーで発光するとしてもDuty 10%だと9割は消灯しているので計算上は本来の1割未満の明るさしかないことになります。
バランスをどう取るか、なかなか難しい話。
0DoFならDuty高めで良い
VR酔いを気にしなくてよい0DoFで動画コンテンツを楽しむなどの場合はDuty高くてよいです。電流量=明るさになるのでシンプルに明るくできます。
RayNeo Air 4 Proを買って試したところDuty高めで目に優しい。HDR10対応は面白いので動画を見るのがメインの方にはオススメです。
XREAL OneシリーズのDuty事情
3DoFモードの最大輝度に合わせて0DoFモードの最大輝度も設計されているようです。モード切り替えがボタンひとつでできるので、同じ明るさ設定でモードを切り替えたら突然眩しくなるとビックリしちゃいますからね。
3DoFモードは前述の通りVR酔い対策でDutyを下げてます。具体的には分かりませんが一般的には10~30%程度が定番のようです。ただし10%のままではフルパワーでも暗すぎるのである程度Dutyを上げて明るさを確保するようになっているみたい。先ほども書いた通りスマホカメラで見ながら明るさを調節すると縞々が可変するのがDutyが変化している証です。逆に0DoF(ブレ補正なし)では下2段以外は縞々が変わらないので高値で固定されているはず。
0DoF(ブレ補正なし)の「明るさ増強」では3DoFに合わせる条件から解き放たれるので明るくなります。カタログスペックにある600ニトとか700ニトというのは「明るさ増強」の最大輝度ですね。たぶん3DoFの最大輝度は300ニトぐらいかなあという印象です。
3DoFが必要ない「動画見る」場合は眼球とOLEDにやさしい0DoF(ブレ補正なし)がオススメです。
繰り返し0DoF(ブレ補正なし)といってるのはデフォルトの0DoFがブレ補正ありでシステム的に3DoFと同じでDuty低めです。
ちなみに0DoFでも常に画像処理で樽型補正しているので弊者作成のディスプレイテストをすると面白い体験ができます。通常の使用で実害があるかは別として、XREAL Oneシリーズでサブピクセルストライプとか見ると面白いですよ。
おしまいに
残像感を消すための消灯時間、知覚はできなくても激しい点滅しているので眼精疲労の原因になってる可能性があり、消灯してる時間が無いと頭を動かしたときに残像が出てしまいいわゆるVR酔いの原因になるから両立するのは難しいんだろうなあ、メーカーは大変だなあという学び。
マーケティング的に明るい画面を求められるが、短時間で強く光らせるために大電流を流すことによるOLEDへのダメージにも配慮しないといけないのも大変そうだなあという学び。製品寿命を犠牲にして無責任に明るくする方がマーケティング上は有利だけど無理をさせないのが評価されてもいいんじゃないかとも思いました。
色々調べてなんだかんだバードバス光学系が光学的には有利な状況はまだ続きそうだなあと思ったのでやっぱりXREAL Oneにしとこうね。
現場からは以上です。









































